金沢に住んで間もない頃に浅野川近くの古本屋で見つけた、 新美南吉の最初の著作「手毬と鉢の子」。 まだ先代南陽堂の頃で、店内は天井まで本が積み上がり、 平積みのものも乱雑極まりなく、手が埃で真っ黒になった。 呆然としていても始まらないので、そこらを探索、 こども向けのイリンの百科事典と、この本が出て来た。 昭和18年の第四版(5000部)、まずまず売れていたのだろう。 南吉の名こそ知るのみで作品には縁がなかったし、 良寛にもまだそれほど関心のない二十代だから、 この一冊を入手しているのが不思議。 (いいね! と青二才の自分にボタン・エールを) 今年は南吉生誕百年、今日3月22日は没後七十周年。 日暮れに 楡の森かげで、 まずしい葬式してた。 小さい、白い 棺には、 ラッパや絵本を入れて。 土饅頭の ほとりには、 野薔薇やなんか撒いて。 名まえが 横にきざまれた 小さい十字架を立てて。 そして、みんなで祈ってた。 ——小鳥よ、空から下りてこい。 ——光よ、ここまで射してこい。 ——ここに、こどもがねむってる。 『葬式』という詩。これをそのまま作者に。 ——ここに、南吉がねむってる。 南吉の墓なら小鳥も空から下りてくるだろう。 光もうらうらと射すだろう。花も蕾を開くだろう。 わが裏庭には、珍しくイタチが現れた。 南吉忌だから、蝸牛山と鯰池のことも考えた。 新美南吉は悲しむこころをもった詩人である。 悲しむ力、を正しくもっていた人間である。 先の一書の奥付頁にある、南吉の検印。 なんだか今日はそれがしーんと目に沁みた。
by r_bunko
| 2013-03-22 23:53
| 本・電子本
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