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新美南吉
新美南吉_c0028055_23541338.jpg

金沢に住んで間もない頃に浅野川近くの古本屋で見つけた、
新美南吉の最初の著作「手毬と鉢の子」。
まだ先代南陽堂の頃で、店内は天井まで本が積み上がり、
平積みのものも乱雑極まりなく、手が埃で真っ黒になった。
呆然としていても始まらないので、そこらを探索、
こども向けのイリンの百科事典と、この本が出て来た。
昭和18年の第四版(5000部)、まずまず売れていたのだろう。
南吉の名こそ知るのみで作品には縁がなかったし、
良寛にもまだそれほど関心のない二十代だから、
この一冊を入手しているのが不思議。
(いいね! と青二才の自分にボタン・エールを)

今年は南吉生誕百年、今日3月22日は没後七十周年。

  日暮れに
  楡の森かげで、
  まずしい葬式してた。
  小さい、白い
  棺には、
  ラッパや絵本を入れて。

  土饅頭の
  ほとりには、
  野薔薇やなんか撒いて。
  名まえが
  横にきざまれた
  小さい十字架を立てて。

  そして、みんなで祈ってた。
  ——小鳥よ、空から下りてこい。
  ——光よ、ここまで射してこい。
  ——ここに、こどもがねむってる。

『葬式』という詩。これをそのまま作者に。
  ——ここに、南吉がねむってる。
南吉の墓なら小鳥も空から下りてくるだろう。
光もうらうらと射すだろう。花も蕾を開くだろう。
わが裏庭には、珍しくイタチが現れた。
南吉忌だから、蝸牛山と鯰池のことも考えた。

新美南吉は悲しむこころをもった詩人である。
悲しむ力、を正しくもっていた人間である。
先の一書の奥付頁にある、南吉の検印。
なんだか今日はそれがしーんと目に沁みた。

新美南吉_c0028055_23495793.jpg

by r_bunko | 2013-03-22 23:53 | 本・電子本
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詩と、絵と、ジャズと……星と鳥と……漂泊文庫便り
by r_bunko
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