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三日月散歩
Twitterより:
三日月散歩に出た。町を外れるとヒグラシの声が降った。池にはバンの番がいて、時折キャッと鳴く。オニバスは衰退したか、ヒシとマコモが繁茂。カワセミの姿はもう長く見ていない。

山際が霞んでいるので諦めた帰り道、思わぬ低きに糸月がいた。細い。月齢2.5。春のゴンドラ形に比べると縦に立っている。ちょうど電線の間に見えたので、音楽のヘ音記号のよう。耳を澄ませば、何か聞こえたかもしれない。

夕闇のネムノキ。葉は閉じて眠りにつきかかっている。花はシルエットでそれとわかる。見上げていると、ぽっと赤い星が灯った。牛飼い座のアルクトゥールスだった。

小学校校庭の病死した大榎。ばっさり伐られて、いまは太い枝を短く挙げるのみ。それも来月には根元から伐採されるという。近寄ると、両手を広げたような枝の中に星が入った。スピカ、火星、土星の三つの並び。これが最後の風景になるだろう。

夏場は歩かなくなるので、年々筋肉が衰え、あわせて肺機能も弱まっていく。
なんとか食い止めなければと思うけれど、今日も休み休みで、汗だくだく。
山歩きのつもりで、ゆっくりゆっくりでもいいからと歩く。
それでつい距離を、というよりも風景を欲張って、へとへとになっている。
決死の散歩というのもねえ、冴えないなあ。
# by r_bunko | 2014-07-29 23:47 | 自然
四つ葉のふうら杖

四つ葉のふうら杖_c0028055_2352049.jpg

ふうらの杖の基本は、金沢・犀川の草花。
川べりに住んでいたから、散策で親しんだものばかり。
今頃だとヘラオオバコ、ペンペングサ、クローバー。
ねじ花なんかも手に持たせれば、風趣があった。

それらの花がここでは身近に無い。
あるのはクローバーで、これは四つ葉スポットを見つけた。
去年から鉢で育てていて、一年目は失敗。
二年目の今年は採集した株が良かったのか、次々に四つ葉を着ける。
それどころか五つ葉も何枚か着けてくる。

四つ葉はスポットで何十枚も採集、押し葉しているので、
楽しみは葉ではなく、花の後の杖である。
クローバー杖はふうらの定番、一番人気ではあったけれども、
まだ一人として四つ葉の杖を手にしたものはいなかった。
毎日白い花を楽しみ、枯れるのを心待ちにしているのに、
誰か葉だけでなく花も食べるものがいた。
そうして幾つかの落胆を経て、ついに待望の杖を収穫した。

四つ葉杖第一号は、花はおかげで小ぶりになった。
ラッキーなふうらは、一番近くにいて目についたひと。
幸運がやって来るといいね。
花は毎年季節に巡ってくるけれど、幸運はね。

「I want to be happy」でも聴かせてあげよう。
# by r_bunko | 2014-06-30 23:54 | ふうら散歩
GWW —ボブ・ディラン
Twitterより:
iTunesにはボブ・ディランが一曲もない。自分でびっくり。全部アナログ。そのためにプレーヤーはいまだ現役。いまターンテーブルに乗っているのは、緑色の円盤。《Troubled Troubador》という地下室「ビッグ・ピンク」でのザ・バンドとの演奏。愛聴盤のBootleg。

ディランは1978年の初来日しか体験していないけれども、大阪で二日連続して聴いた。会場全体が一つのエネルギー銀河となっていて、終わったら体も心も120%充電されていた。内から沸々と声を上げたくてたまらなくなっていた。

そんな時に詩の朗読の誘いがあったから一も二も無く。だから最初の朗読は、体の中に浸透したディランの1978年のリズム(例えば《Oh, Sister》)に乗って。

GWW —ボブ・ディラン_c0028055_3495069.jpg

実際はコルトレーンの《Ole》に乗って、
「野がぁ、唸る。
 南無野やぁ、小目野のぉあたり、
 風がぁ、ジャズがぁ起こり、
 草がぁびるびるとぉ、鳴る」
とせり上がるように詠んでいたはず。
でもディランの影響というか、歌唱からも学んだものは多い。
そのうち、尺八やシンセサイダーと共演して、
いつしかビリー・ホリディの低唱を理想とするようになる。

ヴォーカルに限らず、インストルメンタルでも
どこかに<語り>をもっているパフォーマンスが好きである。
歌と語りの間を自在にスライドするような演奏。
歌とも語りともつかない、或いは歌でも語りでもあるような。

ディランもまさしくそんな一人。
好きな曲をざっと挙げてみると:

・One Too Mamy Mornings
・Tomorrow Is A Long Time
・Mr. Tambourine Man
・Ballad Of A Thin Man
・I'm Not There
・This Wheel's On Fire
・I Shall Be Released
・All Along The Watchtower
・One More Cup Of Coffee
・Blind Willie McTell

ベスト10というわけではないけれど、曲との出会いや縁のようなものがあって。
# by r_bunko | 2014-05-24 23:50 | 音楽
田舎の細道 —ジプシー・スイング
田舎の細道 —ジプシー・スイング_c0028055_12363411.jpg

ジャンゴ・ラインハルトの誕生日(5.16)は、芭蕉の奥の細道出立の日。
こまごま室内での用事もあるけれど、こんな日はじっとしておれない。
「片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず」、と散歩に出た。
連れは、奥の細道300周年の日に作った芭蕉像。
「取もの手につかず」双眼鏡を忘れ、シューズを履き間違え。

朝方は飛ぶように走っていた雲が、夕方には一つもない。
なんだ、「ヌアージュ」を聴きながら、雲も楽しみたいと思っていたのに。
雲は<へうはく>の友なんだがな。

翁がまず白川の関を目標としたように、宛は城山麓の芭蕉の木にした。
散歩のBGMはジャンゴと決めてiPhoneを探ると、まさかの一曲のみ。
(iTunesに収録曲が多すぎて、セレクトを後回しにしたままだった)
その一曲「マイナー・スイング」を取り敢えず繰り返して、
後はジプシーというプレイリストに入っている20曲で代行することに。

芭蕉は旅の達人、風の達人。
ロマの人々は旅の民族、空と風の民族。
われも、と言いたいところだけれど、魂はともかく、
さっそく道筋をうっかり。ゆるい登りで息も早々と上がり気味。

薔薇と金屑、エノキ、テイカカズラ、クローバー、オオデマリと
ここまでは前回と一緒。四つ葉も一枚見つけた。
バラもクローバーも芭蕉の知らない植物だろう。
一句詠んでもらえるなら、どういう句振りだろうか、と空想も楽しい。

空ではヒバリが高らか。
キジの声も一度したように思う。
どこの庭にもシャクヤクが咲いて、マルハナバチが花粉にまみれている。
ゆっくり坂を登り、犬に吠えられ、ようやく宛に辿り着く。
山麓の禅寺への参道脇に野生していたバショウ
それが無かった。どこか間の抜けた風景。まさかね。

一度花を見たいと願いつつ、暑い頃で叶わなかった。
この町で他にバショウのあるところを知らない。
誰のじゃまにもならず、独り茫々と天地に自適していたのにね。
その場を動けずにいると、すぐ頭の上でいい声の、いい歌がする。
ホオジロだと思うけれど、いつもより声も節も豊かで美しい。

やや元気が出て、寺まで登り、傍らの林に分け入ってみた。
白い花をびっしり着けた一木が涼やかに立っていた。
遠目ではミズキかムシカリかと見えたのが、ガマズミだった。
足下には珍しい形をしたトウダイグサが目に付く。



再び犬に吠えられながら坂を下り、別の峠道を登る。
バショウに会えなかったのなら、ユリノキだ。
娘さんが生まれた記念樹で、主は植木屋からフウだと聞いたらしい。
でも、花と実と葉のどれを見てもユリノキ。その花の季節。

無かった。歯の抜けたような風景。今日は、まさかばかり。
切り株があった。上の畑の片隅に伐採した幹や枝が纏められていた。
むざんやな、と芭蕉の山中での句が出かかった。
冬芽のままの枝先を三本ほど貰った。
一本だけ緑の新芽が出ているのを見つけて、それも貰った。
去りがたく写真を撮っているとセグロセキレイが眺めに来た。

田舎の細道 —ジプシー・スイング_c0028055_12373248.jpg

町から次々と馴染んだ木が消えていく。
流寓十年を慰めてくれた木たちである。
この二三年であちこちの木が刈り込まれてもいる。
藪や草叢が刈られて、鳥たちはますます住みにくくなるばかり。
家(町)を出て、散歩ではなく、漂泊をしたくなってくる。

農道をとぽとぽ帰っていると、まっすぐにカワラヒワが飛んできて、
頭の上でホバリング? と思ったら、電線があった。
さらに行くと、こんどはスズメが近くの杭に止まって大きく鳴いた。
こちらを向いて、iPhoneカメラを構えても逃げない。
キョロン、ジッ、キョロン、ジー、と聴き慣れない節。
アカハラみたいな囀りだけれど、どう見ても普通のスズメ。
普通でないのは、その態度と、その鳴き振り。

なるほどすべてのことは虚論かもしれない。
あるいは虚露と言ったのか。
「行く春や鳥啼き魚の目は泪」だから、今日鳥たちはやさしい。
# by r_bunko | 2014-05-18 12:57 | ふうら散歩
ときにはシュール
(5月10日散歩続き)

久し振りに大エノキに寄った。
新芽は一枚もない。
木は死んだまま立っている。
白い半月がそれを見下ろしていた。
夜になると星が咲くだろう。

中学校校庭のニセアカシア、
羅漢寺裏のテイカカズラを見て、四つ葉ロードへ。
なんなく一つ発見。
草刈りの後で叢が縮小していたが、
最後のスポットでは立て続けに十枚ほど。
五つ葉も二枚。

ときにはシュール_c0028055_2222599.jpg

村の入口付近にオオデマリ。
意表をつかれるような咲かせ方、
遊び心であるような、ないような。
庭園に園芸植物然としているよりはよっぽどいい

双眼鏡を忘れたけれど、天気がいいので遠回り。
山はいつの間にこんなに緑になったのか。
雲一片もなく、ヒバリが鳴きながら上下する。
ある一羽は月へ月へと昇っていくように見えた。

上池。
夏にはびっしりヒシが水面を覆う。
今はまだアサザの池もオニバスの池もシーズン前。
だからオートバイが走っているのか。
水に沈んで、だいぶ錆びついている。

ときにはシュール_c0028055_2233991.jpg

風景とはなにか。
散歩とはなにか。
日常的かつシュールなオムニバス映画を歩いたような夕べ。
# by r_bunko | 2014-05-11 22:51 | 自然



詩と、絵と、ジャズと……星と鳥と……漂泊文庫便り
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