星百科大事典
孤島に持っていくのに、もう一冊許されるならば、
ロバート・バーナム・Jrの「星百科大事典」を携えたい。
小望遠鏡での観察記録に役立つデータ満載の大冊。
全天88星座の恒星、二重星、変光星、星雲星団などが、
豊富な写真・星図・表・グラフとともに詳細に解説されている。
最新のハッブル望遠鏡の宇宙写真にも目を見張るが、
本書に掲載のモノクロームの写真の素晴らしいこと。
もともと自分の研究観察用のノートだったものを、
当初ルーズリーフ形式で自費出版していただけあって、
星と宇宙への愛に満ちあふれている。
高価な本だったが、とある原稿料を図書券で貰った際に、
足りぬ分を補って<えいやっ>と入手した。
空の星とこの一冊があれば生涯飽きることがないだろう。
望遠鏡はあれば申し分ないが、
無ければないでイマジネーションがあればそれで済む。

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ところでそのロバート・バーナムの生涯:

1931年シカゴ生まれのシャイな少年は、
両親と移住したアリゾナの空を自家製の望遠鏡で探索。
1957年秋に彗星を発見、これが縁でローエル天文台に就職。
1966年に「Celestial Handbook」を出版。
1978年にドーバー社から改訂版(1988年に日本版)。
1979年に一連のプロジェクトが終了、天文台を解雇される。
著書は好評で売れ行きも良かったが、出版社と揉めたり、
シャイで孤独な性格もあって困窮、1986年にドロップアウト。
晩年はサンジェゴの公園で猫の絵を売って暮らし、
無名と貧困の裡に1993年61歳で世を去った。

うーむ。知らなかった。Wikiで知ったばかり。
天文界にはもう一人同姓同名の編集者がいたらしく、
彼の読者はその人と混同して、誰も実態を知らなかったとか。

1993年と言えば、北陸在住の天文中年は、
念願の小望遠鏡(Teegul-100)を手に入れて、
雪雲を恨みながら、束の間の観望に勤しんでいた頃。
当時(彼の亡くなる二日前 3.18)のフィールド・ノートに、
  金星
  高度20度。いよいよ夕空低くなる。次第に観測困難。
  三日月から二日月、さらに一日月へと細りゆく。
  輝面比…k=0.1 視直径54秒 0.3天文単位。
  春の夕べの細身のヴィーナス。夕鶴のつうを想わせる。
  3月30日の内合まで、出来るだけ細い金星を見たい。

うーむ、こうして振り返って読んでいるうちに、
この金星はそのままロバート・バーナム・Jrにも思えてきた。
金星は内合が過ぎたら明け方の空に戻ってくるが、
その人はついに太陽に溶暗して消え去ってしまった。

1400ページ。3キログラム。
「星百科大事典」は、
つうが一枚一枚自分の羽で織った「鶴の千羽織」のような、
ロバート・バーナム・Jrの骨身を削った一書である。

たいせつにしなくては。
ぼろぼろになるまで読まなくては。

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(おおぐま座ではゴッホの「星夜」なども紹介されている)
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by r_bunko | 2012-11-24 15:38 | 天文
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